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光輝の後ろには、裂けたアスファルトの道路が、ぽっかりと口を開けて待ち構えている。雪山のクレバスのようなそれの底には、すでに先客である砕けたビルや潰れた車が腹を見せ、赤黒い炎を上げていた。
クレバスは、まだ満腹にはほど遠いと思っているのだろう。ズリズリとそちらへ引っ張られるように滑ってゆく光輝の靴の底には、もう十分な摩擦係数は残されていない。
光輝は今、大雨の中、道路脇の排水溝にくるくると回りながら吸い込まれてゆく虫のようなものだった。
「くっそぉ! なんなんだよ、これっ? 父さん。父さーん!」
光輝の見つめる先には、大きな頼れる背中があった。背中には、盾型の枠に、《QG》という白いロゴがデザインされたマークが、誇らしげに描かれている。
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