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光輝の胸ポケットから強力なシアンの輝きが迸り、風が巻き起こる。地面は石を投げ込まれた水面の波紋のように、光輝を中心にしてザザザと波立った。
光輝たちが帰還した《ゲート》は、役目を終え、もう消えている。
あれは異世界から基準世界への一方通行になっているからだ。ゲートには予定外の“異物”の侵入を防ぐための、抑止弁的な役割もある。
「よし。そのまま、全力でシールドを保持していろ。で、なければ」
コートのポケットに突っ込まれていた東雲の腕がゆっくりと持ちあがり、光輝へと向かった。
「で、なければ?」
光輝は何が始まるのかとワクワクしている。お陰で、シールドの出力がまた上がった。
「あ、あわ。わわわわわ」
章太郎は東雲が何をしようとしているのか、もう察している。すぐに訪れるであろう最悪の光景を予想し、章太郎は両手を目に当てた。
章太郎は醜いもの、特にスプラッターやグロテスクなものが、大嫌いだった。
そして、東雲がその鷹のように鋭い目を、くわっと見開いた。
「でなければ、死ぬ」
「え? っ、ぎゃあああああああああああ!」
ずどん、と鉄骨が落下したような重い音とともに、絶叫した光輝が一瞬で地面に沈んだ。いや、埋まった。いや、そうではない。
“突き刺さった”。
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