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彰は振り返りもせずにそう言うと、風に吹かれるコートの懐から、透明な、四角い箱を取り出した。
サイコロのような形をしたそれは、野球のボールくらいの大きさで、不思議な淡い光を放っている。
彰はその『キューブ』を、天にかざした。
「……ち。なんてでかい“穴”だ。こりゃー、俺の“力”の全てを注いでも、塞げるかどうか……。いや、塞ぐ。塞ぐんだ!」
キューブは光を増してゆく。
光輝はなにかを決意した父の背中を、目を細めて見続けた。嫌な予感が光輝の体を貫いてゆく。
「『サイコキノ』、最大。『空間歪曲』。『時空補填』っ……。ぐ、う」
彰の体が光に包まれ、光輝からはシルエットしか確認できなくなってゆく。
「うわ、うわ、わわ」
それにつれて、今度は乱気流となった暴風に煽られた光輝は、よろよろとよろめいた。
小石や空き缶、なんだか分からない破片なども巻き上がり、光輝と共に渦を巻き始める。光輝の足が、とうとう地を離れた。そして。
「わ。わあぁぁーっ!」
光輝の体は、彰を追い越し、ぐんぐん前へと引き寄せられた。
「光輝! うお、おおおお! ちっくしょおっ!」
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