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それは、3ヵ月前の4月のこと___
「うわぁ~。凄い雨だ」
その日は、激しい雨が降っていた。
あたしは、朝は晴れていたので平気だと思い、傘を持って行かなかった。折りたたみ傘も持ってなかった。
友達には、傘にいれてあげるという人も中にはいたけど、大丈夫だよ。と言って晴れるまで待つことにした。
「ちゃんと天気予報見とけばよかったな」そんなことを呟きながら、学年の昇降口で立っていた。
すると突然____
「…笹原。傘ないの?」
と、聞いたことのない声が後ろからした。それは、
「永島…くん?」
永島くんだった。永島くんの声を聞いたのはそのときが初めてだったと思う。新学期の自己紹介のときも、一礼しただけだし授業中も永島くんを指名する先生はいなかったから。
「…傘。ないのって聞いてるんだけど」
少し無愛想な態度に、ムスッとしながらも「うん…。天気予報見なかったから持ってきてなくてさ…」
と答えた。
永島くんってこんな声だったんだ。意外と、近くで顔を見るときれいな顔立ちしてるなぁ。前髪もう少しあげたらいいのに。なんて変なこと考えてたら、
「じゃあ、俺の貸してあげる。返さなくて大丈夫だから。それに、俺と話してるとこ誰かに見られたら、笹原に迷惑かかるだろ。ん」
永島くんは、傘をあたしに渡してきた。黒くて、大きい傘。持ち手は、まだ暖かかった。
「永島くんはどうするの?傘」
そうだ。あたしが借りたら、永島くんの傘がなくなってしまうんではないか。そう思ってそう聞いたら、
「いい。俺はこのまま帰るから。じゃあ」と言い残して、走っていった。
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