茶美の足あと

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 翌日の朝、焼いたトーストにバターをつけて二口、三口齧っただけで、後はミルク入りの紅茶をひと息に飲むと、手早く準備を済ませ、あくびを繰り返しながら茶美は玄関をでた。  昨晩、品川のイマジカで仕事を終えた茶美は、十一時半過ぎに家に帰り着いた。  自宅は東京都ではあるが、多摩地区の国立市で、都心からは離れている。  遅くに仕事が終わると、帰りは電車を乗り継ぎ、その日のうちに家にたどり着ければラッキーだといえた。  帰宅が深夜になってしまったときは、茶美の母親が翌朝学校に連絡を入れ、登校時間を遅くしてもらうこともあった。  茶美を嫌う女子は、そらきたとばかり、社長出勤とか、芸能人気取りなどと、お得意の悪口にみごとな花を咲かす。 「学校にわざと遅れてきて、わたしはあんたたちとは住む世界が違うのよ、アイドルなの、天下のアイドル様、あんたらみたいに、どこにでも転がってる石ころみたいな女の子たちとは、お姫様と青っぱなの垂れたアホの小娘ほどの差があるの、ね、わかる? そういいてえんだよ、河村のブスは!」  そんなことを、教室中に響き渡る大声で言った女子もいた。  今日はとりあえず普通に登校できる。大丈夫だ。  茶美は住宅街を早足で、ときおり小走りになって抜け、国立駅へと急いだ。
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