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茶美は机の上にカバンを置くと、力なくゆっくりとイスを引いて座った。そのままじっとして、動く気がしない。
窓の外は、空をおおった雲をすかして降る、ねずみ色の鈍い光が広がっている。五月も半ばをすぎ、生ぬるい空気が教室のなかにまで漂っていた。
自分がこのクラス、というか、学校で嫌われているのはわかっている。
登校している最中も、まわりを歩く生徒たちが、こちらを見てひそひそと話して笑い合っているし、露骨に嫌な目をむけてくる女子もいる。
でも、それもしかたがないと思い、下を向いて自分を影のように無味無害な存在にしている。そして、他の生徒たちの間を、できるだけ接触を避けて、くねくねとすり抜けるようにして生きている。
渋谷のスクランブル交差点で信号待ちしてるところをスカウトされて事務所に入ったのが、中三の二学期が終わるころ。背が低く少しぽっちゃりしていたが、りんごくらいの大きさの小さな顔と、二重まぶたのくりくりとした目が印象的なのが、スカウトされた理由だった。すぐにレッスンを始め、高校入学と時期を同じくして、事務所に所属している女の子九人でうみねこリンクを結成した。
グループとして活動し始めて一年以上がすぎて、他人の悪意にも慣れてきた。
しかし、悪意だけではない。まわりからの好意と羨望(せんぼう)さえも、茶美をこまらせ、苦しませるものへと変わっていった。
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