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それでも、もし寝ていたとしたら、逃げ遅れることがあっても不思議ではない。
「どうしてあの晩に限って、おれたち寮生全員がもつ鍋屋に集まったのだろうか。それはもちろん、偶然でしかないんだよ。でも……」
この話の語っていた立花は、言い淀んだ。
「偶然だけど、六人全員が、偶然だとは思ってない。危険を察知した結果だった、誰もがそう思ってるんだ」
灰と黒焦げの残骸になった寮は取り壊され、新しいワンルームアパートがその跡地に建った。
六人に関しては、以前と同額の月々三万円で部屋を借りることができた。しかし二か月と経たないうちに、四年生の先輩は卒業して寮をでていった。もうすぐ桜が咲く頃だった。
立花は三年生になった今も、その真新しいアパートに住んでいる。
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