二人で怪談

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 携帯電話で時刻を確認する。十一時四十三分だ。十二時過ぎに店をでればよかったので、まだ少し時間がある。  啓太はバッグから小銭入れをだし、チャックを開けた。百円玉の銀色が数枚ある。コーヒーは三百円だった。啓太は小銭入れを持って立ち上がろうとした。  なんとなくよそ見をしていたため太ももがテーブルにぶつかり、体勢がくずれた。手に持った小銭入れから、硬貨がこぼれる。百円玉が、目の前のテーブルにかたい音を立てて落ちた。そのままころころと転がり、テーブルから落ちていった。  床に勢いをつけて落下した百円玉を、啓太はとっさに片足で踏みつけようとした。だが、寸での差で間に合わず、百円玉は床の上をさらに転がってどんどんと離れていった。  啓太は立ち上がり、百円玉を追おうとした。
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