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そのすべての根っこは、嫉妬だ。赤く燃えるマグマのように熱く、どろどろとしてうねっている、とめどなくあふれる激情の放出。
周囲の嫉妬は、具体的な行為に姿を変えて、茶美を攻撃してきた。誹謗(ひぼう)、中傷、無視などに。
そんなつらい毎日を過ごしながらも、自分にできるのは、とにかく目の前のやるべきことを一生懸命にがんばって、一人でも多くの人にうみねこリンクを好きになってもらう、それ以外にはなかった。
嫉妬なんて消えてなくなるくらい、うみねこリンクを大好きになってもらいたい、そう願っている。
ハンバーガーを食べ終わり、携帯電話をしまうと、茶美は立ち上がった。
うみねこリンクを好きになってもらう、つまり、うみねこリンクが売れるということ。アイドルグループとしてメジャーになること。
その夢によって、嫌なことを頭から振り払い、茶美はこれからのリハにのぞもうとしている。
「茶美、そろそろ時間だぞ」
振り付けのパートをダンスの先生と確認していると、リハ室の扉を開けて顔をだしたマネージャーに呼びかけられた。
「はい」
返事をして、ダンスの先生に事情を話す。先生は事前にマネージャーからの連絡を受けていて、茶美が抜けることを知っていた。
壁際に置かれたバックに荷物をまとめていると、
「茶美、逃げるんじゃないよ」
と、しゃがんでいる茶美の頭の上から厳しい口調の声が落ちてきた。
「サヤちゃん」
見上げると、メンバーで二歳年上の松下彩果(まつしたさやか)が恐い顔を作って見下ろしている。
「わたし、これからイマジカなの。苦手な曲のダンスだから、最後までいたかったんだけどね」
「今週、茶美なんだ」
「うん」
「なんだよ、帰りに骨董通りのカフェにつき合せようと思ってたのに」
「里奈ぴょんといけば?」
「里奈はいくこと決まってんの。茶美と三人でいこうって話してたわけ」
「ごめん」
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