Part 1

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海。 波打ち際で遊んでた子供が、立ち上がって振り向く。 真っ赤なビキニの水着。 また顔を海に向けて、波とじゃれ始めた。 押し寄せる波、引いていく波。 はしゃぐその姿は、天使か妖精のようだ。 作りかけの砂の城が波で崩れる。 潮が満ちてきたのだろう。 声がした。 女の子が思いきり顔をしかめる。 まだ遊び足りないらしい。 ワンピースの水着をきて、麦わら帽子をかぶったスタイルのいい女が現れた。 女の子の手を強く引いて戻ってくる。 悲しそうに海を振り向いていた女の子が、あっち、と指さした。 波打ち際に、スイカの模様がプリントされた浮き輪がぽつんと置きざりになっていた。 女がそれを取りに行く。 その隙を狙って女の子が走りだす。 もっと、もっとぉ、とせがむように手を伸ばした。 「どうしたの。」 男の声の 「うみ、もっと」 「もう終わりよ」 浮き輪を左手に下げた女が戻ってきた。 「小梅、あんた唇が紫色になってるじゃないの。一回あがって、ピンク色になったらまた行っていいから」 「どれどれ、見せてごらん」 男の声がした。 素直に女の子が 顔を近づける。 ママの言う通りだよ、とその唇を軽く指ではさんだ。 「あとで来ようね」 「いま、いま」 激しく首を振る。 なぁ、と男が言った。 「もうちょっといいんじゃないかな。日も高いし、俺が見てるよ」
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