プロローグ

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 ビルの影に身を潜めながら、俺はアサルトライフル(M4 Sシステム)を抱えている。  近くに落ちていた鏡の破片を拾えば、写っているものが見えるようにそぅっと影から出した。 「…ちっ…やっぱり居やがる…」  鏡に写っていたのは、四足歩行の小型AMRsだった。  背部には自動掃射の機関銃が接合されており、顔と呼ばれそうな部分には赤外線センサーが作動している。  幸いにもセンサーの方向は俺のいる場所とは反対側で、確認できたのはその一体だけ。  この状況下なら、いまある装備で倒せそうだ。  だが油断は禁物。  いくら小型であろうと、相手はあのAMRsだ。  一機がやられれば、その数分後には同型の奴らが群がってくる。  それなら敢えてこの建物内に立て籠った方が安全だ。  そうと決まれば鏡を地面に置き、ライフルを両手で構えて建物内の奥へと進み始めた。  廃墟とかしているこのビルには、もう既に人の気配はなかった。  無理もないか。この日本――いや、《旧日本》は100年前から滅んでいる。  昔は人が沢山いたといわれているこの都会だが、いまではもうゴーストタウンと化している。  ベルトのポーチから水の入ったボトルを取りだし、緊張で渇いた喉を潤す。  昨日が雨で、助かった。  この世界で生き抜くには水が必要不可欠だ。  水の取り合いで、昔大人共が殺しあっているのを何度も見たことがある。  銃だってそうだ。  勝者になるには力がいる。 銃はその象徴とでもいうべきであろうか。  上へと続く階段を見つけた。 途中エレベーターも見つけたが、風化などの危険を考えれば、階段の方がよっぽど安全だ。  ライフルを肩に掛け、腰のホルスターから拳銃(ガバメント)を抜き、安全装置を解除する。  たとえ廃墟でもAMRsが潜んでいる場合がある。  さっき見た小型やそれよりもっと小さい――例えば虫の形に似た超小型だっている。
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