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万が一、階段でAMRsに見つかった時、ライフルじゃ取り回しが遅く、対処に困る。
だが拳銃だけでじゃ"もしもの場合"、心細い。
左側のベルトに付けていた小さい鞘から、黒く塗装されているバトルナイフを逆手で抜いた。
右手で銃を構え、ナイフを持った左手を銃のグリップに添える。
この構えは昔、大人気だったゲームのキャラの構えらしい。
俺に生き方を教えてくれた人はよほどそのゲームが好きだったとか。
深く、そして静かに息を吸い、身体に緊張感を走らせ、銃を構える。
身体を壁に寄せ、警戒しながらも、最初の一段に足を踏み入れる。
そこからゆっくり、ゆっくりと階段を昇っていく。
「ハァ………ハァ………」
確信がない恐怖に心臓の鼓動は早くなっていく。
息遣いは一段昇ることにより少しずつ荒くなっていき、額に汗が流れる。
「……ふぅ……何もない…か…」
二階まで辿り着けば、何事もなかったことに安堵の息を吐く。
恐怖で早まっていた心臓も少しずつ落ち着いていく。
息を整え、辺りを見渡せば、そこは一階と何ら変わらない景色だった。
亀裂が走った壁や床、電気が通っておらず、薄暗い。
辺りには服やシーツ、カーテンらしき布が散乱していた。
この階はどうやら、布の製品が多い階みたいだ。
コツッ――コツッ――
「――ッ!」
偶然聴こえた足音。
瞬間であったが、足音が聴こえた方向から死角位置となる非常用ドアの影に隠れた。
もし、あのまま反応できなかったら、俺は直ぐに見つかっていただろう。
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