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そもそも何故、足音が聴こえたのだろうか。
ここは廃墟であるため、小型はいないはずだ。
超小型ならば、この廃墟に潜むことぐらいは可能な筈だ。
だが、この足音は明らかに超小型のではないし、機械的な音でもないから、AMRsではない。
ということは―――――
「ッ…」
グリップを握る手が汗ばむ。
唾を飲み込み、トリガーに指をかけ、構える。
コツッ――コツッ――――――
「(…止まった?)」
あと少しでやり過ごせるかと思っていたのに、足音は偶然にも俺の隠れている壁のすぐ近くだった。
だがこの時、足音の正体の方に気が回っていたのか、更に忍び寄る相手の存在に気付かなかった。
カチャッ――――
「動かないで…」
その人物は俺の真後ろで、俺の背中に冷たい銃口を押し付けている。
「(…相手がAMRsでない分、まだマシか…)」
もし、ここで俺が相手に蹴りをいれて、形勢を逆転できたら―――
「動かないでね…貴方は既に囲まれてるから…」
形勢逆転――無理そうだ。
今度はローブを身に纏った人間が目の前に姿を表し、アサルトライフルの銃口を俺に向けていた。
出てきた場所と口調の違い。てことは、足音の正体はこのローブの奴ということになる。
「…要望を聞こうか…」
囲まれた以上、形勢はこっちが不利。ならば、コイツらの言うことは聞いた方が安全だ。
俺の言葉に目の前のローブの人物は驚いたかのように、フードの下から見える小さな口をポカンと空けた。
「全く動じない上にその言動…貴方、先読みの能力でも持ってるの?」
「まさか…俺にそんな能力はない…」
「ふぅん…なら、御言葉に甘えようかな…」
ローブの人物は俺の背後で銃を突きつけている仲間に目配せすれば、背後に向けられた銃口を退かしてくれた。
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