1.アジト

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「相手の予想を予想しろ……そう教わったからな」 "あの人"と一緒に行動していた時、そう教わったし、"あの人"も実際にそうしていた。 「教わった?……お仲間がいるのかい?」 今の言葉でどうやら仲間がいると思われた。 その彼女の答えに対して俺は――― 「………」 「……答えられない…か」 正確には"答えたくない"だ。 "あの人"は関係ない上、俺の事情に関わらせたくない。 例え目の前の彼女達に敵と判断されても、何も言わない。 俺が口を閉ざしてから二分辺りだろうか――彼女は溜め息を吐いた。 「奴隷屋じゃないって事は理解した。シンの見たAMRsもアタシ達は知っている……それでも言うつもりは無いと?」 この答えに対してだけ、俺は頷いた。 「OK。どうせアンタは暫くここで暮らしてもらうんだ。妙な真似すれば殺すだけだ」 "妙な真似すれば"ならば、"妙な真似しなければ"安全は確立される。 どっちにしろ、装備がない状態で外に出されるとAMRsに殺されるんだ。 それなら彼女達を"利用"させてもらおうじゃないか。 「決まったんなら、これ外せ」 腕につけらた手錠を出し、外すようにと彼女に訴えかける。 そんな俺の態度にまた溜め息を吐き、小さい鍵を持っては手錠を外した。 「アンタ、殺されそうってのにデカい態度だね」 「じゃなければ生き残れないからな」 長時間――といっても体感ではそんなに長くは感じないが、腕を拘束されたせいか、人類共通の癖なのか、手首を回してしまう。
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