1.アジト

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「……ところでアンタ、名は?」 そういえば俺は彼女の名前を聞いてないままだった。 こいつらと初めて会ったとき、後ろの奴が『お姉ちゃん』といっていたが、それ以外は全く知らない 「あーそういや言ってないな」 目の前の彼女は赤い髪を揺らしながらこっちを見――― 「アタシは椰宵(やよい)。よろしくな」 赤い髪の女性――改め、椰宵は口許が少し曲がったくらいの笑みを見せる。 ヤヨイ――やよい―― 変わった名前だな。 「んじゃシン、とりあえず他のコ達と会っていこうか」 「…他のコ…達?…二人だけじゃないのか?」 「アタシ含めて5人。しかも全員可愛い女の子だぞ」 驚いた。 てっきり椰宵ともう一人の奴だけだと思ったが、まさか後三人――しかも女だとは思わなかった。 まぁ奴隷屋に目をつけられるのは女ぐらいだし、冷静に考えれば驚くことはない。 ちゃっかり"可愛い女の子"宣言をして変なポーズをとってる椰宵をスルーして、部屋から出る。 「……少しは顔を赤らめてもいいじゃん…」 よほど俺のスルーが精神的にきたのか、逆に椰宵が赤らめいてるのは――特に何も感じなかった。 揶宵に連れられて部屋を出ると、一緒に行動していたローブを身に付けたお仲間が立っていた。 「……お姉ちゃん…ソイツ、どうするつもり?」 揶宵から聞いているが、本当に女しかいないみたいだ。 目の前にいる奴も、フードを被って顔が見えないが、声や背丈でわかる。 今、揶宵から俺に対する話を聞いているが、明らかに納得いかない雰囲気を出していた。 「いくらなんでも、その男を野放しするのは危険だよ。 お姉ちゃんや私ならともかく、他のみんなは……」 「別に野放しにするつもりはないよ。 ある程度自由にさせるかわりに監視はするし、妙な事をしたらすぐ殺すよ」 「でもッ――」 「……アンタが男に対する気持ちはわかっている。 だからこそ……だよ」 そう言って揶宵は仲間を説得させたけど、それでも俺に向けられる警戒心は解けていない。 理由については、深く追及しない方がいいだろう。
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