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無精髭の男は、ホゥと感嘆に近い息を吐き出し、表情を改める。
そしてロジカは品定めでもするように、男を上から下に流し見た。
「見たところそんな金を持ってそうには見えないが……うちの商品は、値が張るぜ?」
それに対し男は、口の片端を吊り上げ狂暴に笑う。
「心配要らねぇよ、金なら<委員会>からタンマリ頂いて来たところだ」
そう言って腰に手を回し、人を殴り殺せそうな程にパンパンに金貨が詰まっている貨幣袋を、これ見よがしに掲げて見せた。
<委員会>、正式には<魔王討伐委員会>と云う世界最大の相互扶助組織、かの魔王を討伐する<勇者>を支援する組織でありその活動内容は多岐に渡る。
「オーケー、問題は無さそうだな」
「ああ。それと<魔王殺し>なんて大層なもんじゃなく、今回俺が欲しいのは<龍殺し>だからな」
男はそこまで云うと一旦言葉を切り、笑みを納め、鋭い視線でロジカを射貫く。
「だがその前に、本当にお前さんに龍殺しを打てるのか? 見たところまだ十代の若僧みてぇだが」
男の疑う気持ちは最もだ。
職人の世界であれば勿論センスも重要ではあるが、その経験こそが何より重要視される。
武器を打ち始めて数年そこらの素人のような青年に、最強種の一つに数えられる龍種の強固な鱗を、いとも簡単に切り裂く得物を産み出せるとは到底思えない。
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