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だがそんな心配を鼻で笑うかのように、ロジカは親指を立て、店の奥――壁に掛けられた一振りのロングソードを指し示す。
それは見事な細工の施された、流麗美麗なロングソード。
闘争の世界にその身を浸した者ならば簡単に感じ取れる、絶対的なオーラのような物を、その武器は発していた。
時に人の人生をも狂わせ兼ねない、魔剣とも聖剣とも呼ばれるものと、なんら遜色無い存在感を。
「あれは世界最高峰の鍛冶師イーヴァルディが打ち鍛えた最高傑作。そして俺はその弟子に当たる。
そんじょそこらの鍛冶師と一緒にされちゃ困るぜ」
そのロジカの言葉を聴きながら、だが男の視線は壁に掛けられた武器から離れない。
抗いがたい魔力。
人を惑わし兼ねない力を、その剣は備えていた。
男は暫しの間その剣を見詰めていたが、かぶりを振ってロジカへと視線を戻す。
「確かに、あれだけのもんを打てるなら<師匠>の方は信頼しよう……だが、俺の命を預けるべき武器を打つのはお前さんだろう?」
「確かにその通りだ」
ロジカは男の言葉を聞き、さも当然とばかりに頷く。
そして今度はカウンターの脇、大きな木箱に数十本と乱雑に入った武器を指し示した。
「そいつは俺が打った、一般客向けのもんだ。どれでも良い、適当に取って見てくれ」
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