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男はその言葉に従い、木箱の前へと歩を進めると当たりを付けずに一本の武器を掴み、木箱から抜き出す。
そして鞘に収まった剣の柄を掴み、一息に鞘から抜き出した。
その眩い輝きに、思わず息を飲む。
触れただけで全てを両断する程打ち込み、研ぎ澄まし、磨きあげた業物。
剣の柄は装飾や儀礼とはまるで対極な、ひたすら無骨で無愛想な得物。
だが握った感触は悪くなく、男の闘いに明け暮れた歴戦の勇者としての勘が、良い武器だと告げていた。
そしておもむろに、その剣で男は右の空間を横薙ぎにする。
冗談みたいに振りやすい。
しかも初めて扱った得物であるにも関わらず、腕の延長であるかのような錯覚すら覚える。
何より驚くべきは、それが何て事はない大量生産品のように普通に売られていると云うことだ。
男は思わず弾かれたようにロジカへと視線を向けた。
「勿論、龍を殺すにはその程度じゃ足りない。良い素材、それと二週間から三週間ばかり時間が必要だ」
男の意図したものとは違う答えであったが鍛冶師として十分に――いや、十二分に信頼に足りると判断したのだろう。
男は豪快な笑みを顔に刻み、口を開いた。
「了解だ、早速商談に移ろう」
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