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<Ⅲ>
姉妹エルフに案内されたエルフの里の中――そして森の樹に埋もれるように存在する里の中、その内の一つの家屋に通されたロジカ。
そして現在、目の前には年老いたエルフの男性。
「ようこそ、旅の御仁(ごじん)」
恐らくはこの里の長であろう――深い皺(しわ)の刻まれた相貌に、知性を称えた瞳。
ゆったりとした深緑色のローブを纏い、白い総髪には金色に輝く円環(サークレット)を付けていた。
「初めまして御老人。私は鍛冶師をしておりますロジカと言う者です」
意外と丁寧な言葉遣いでそう述べると、ロジカは深く頭を下げる。
それに対し老エルフは「ウム――」と小さく頷き、ロジカを案内してきた姉妹エルフを見遣った。
「カカオ――それにモカよ、案内ご苦労じゃった」
髪の長い姉のカカオ、そして髪の短い妹のモカは元気良く言葉を返す。
その返事に老エルフは微笑ましげに頷き返し、ロジカへと向き直る。
「さて、儂はこの里の長をしておるもんじゃが――ロジカ殿、何用にここを訪れたのかの?」
ゆっくりと、そして目の前の青年の真意を見定めるように言葉が紡がれた。
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