悪徳勇者からの依頼

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 そして先程の茂みへと意識を集中させる。  先手必勝、それが青年の心得であり、強みであった。  直ぐさま地を蹴り、跳躍。  驚くべき跳躍力、そして瞬発力。  一瞬にして茂みを飛び越え、右手に持った刀剣を空中にて振りかぶる。  高速で流れる視界、そこに映り込む二つの人影。  その事を認識すると同時、舌打ちしたい衝動に駆られながら、青年は二つの人影の間へと剣を降り下ろした。  煌めく白刃。  空間を切り裂く斬撃。  必殺の威力を孕んだその一撃は狙い通り、二つの人影の間をすり抜けた。  突然の事態に身を固くする様子を視界に納めながら、青年は直ぐ様バックステップにて距離を取る。  何にせよ、状況を正確に把握するために。  不用意な争いを、そもそも青年は望んでなどいなかった。
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