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こちらから動くことで機は先した。
青年は油断無く剣を構えながら、武器を携えた二人の人影――いや、少女達を眼を細めて眇(すがめ)見る。
そして青年の目の前の少女達はと言うと、あまりの突然の出来事に驚きを通り過ぎたのか、放心したように、ヘナヘナと二人同時にその場にへたり込んでしまった。
「ふぇ…………」
「ぁ………ぁのぁの」
意識を凍らせること数秒。
「…………………………え?」
青年に凄まじいダメージが襲い来る。
まるで昼寝中の仔猫を踏んでしまった時のような罪悪感。
餌をあげ忘れた飼い猫の恨めしげな怨鎖(えんさ)の叫び。
それらが一瞬にして頭を過り、「そういえば、また餌をあげ忘れたな」等と現実逃避気味な思考にまで至った。
しかしそれも一瞬。
次の瞬間には意識を立て直し、現実を直視する。
少女――いや、恐らくこの森に居ると言うことを顧みれば、人間と敵対せし種族・<エルフ>だと云う結論に辿り着く。
齢(よわい)十三・四とおぼしき、双子エルフ。
小動物のように震える瞳で青年を見遣る、吸い込まれそうな程大きなヘーゼルの瞳。
人形のような精緻な顔立ちに、子供らしい紅薔薇の頬。
将来は美人になると予想される、可愛らしくも美しさの片鱗を見せる容姿。
細い腕で身の丈程もある簡素な造りの大剣を掲げ持つ、栗色の艶やかな髪を膝裏まで延ばした、<姉>とおぼしき少女。
そしてその隣には、こちらもまた簡素な造りの三ツ又の槍を掲げ持つ、肩にかかる程度の同色の髪をした、<妹>とおぼしき少女。
ロングヘアーの方を姉と判断したのは、胸元を押し上げる魅惑的な曲線が理由だ。
一方ショートヘアーの方はペッタンコであった。
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