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流石にこの事態は予想外であったのだろう。
獣や魔獣の類いであれば直ぐに攻撃を加えていた。
盗賊等のこちらに敵意を持っていた者ならば、これまた直ぐにでもその首を掻き切って血の海に沈める。
だが敵意を持たざる少女達、しかも人間の敵対種族と知られる<エルフ>の少女となれば、どのような対応を取るべきか判断に迷うところだ。
沈黙が停滞したままに数秒が過ぎる。
――確かに、高値で売れるわこりゃ。
姉妹エルフの容姿を観察していた青年は、遥か昔から続く、<エルフ>と云う商品に関する、闇市場での相場の理由にひどく納得していた。
納得するだけで、理解をしようとは思わないが。
そんな中、先に沈黙を破ったのは妹エルフであった。
「あのあの……」
ショートヘアーの妹エルフは青年と真っ直ぐ向き合うと、途端に慌てたように視線をさ迷わせる。
何か考えがあった訳では無く、ただ沈黙に耐えきれずに声を発したようだ。
そして妹エルフのアチコチへと動き回った視線は、青年の腰元に辿り着く。
正確には、青年の腰に吊るした二本の剣の内の一本へと。
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