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青年は声にこそ出さないものの、「勝手に期待しておいて、コイツら」と、内心頬をひきつらせていた。
そして先程の期待の籠った視線と取って代わり、今度はまるで暴漢か不審者でも見るような視線を青年へと向けてくる姉妹エルフ。
「フゥー……(落ち着け俺)」
深呼吸を一つ。
ガス抜きをしてフラストレーションの貯まった思考を一度クリアにする。
そして青年は、おもむろに右手に持っていた刀剣を鞘に納めた。
周囲に、パチンと小気味の良い音を響かせ、青年は口を開く。
「驚かせてすまなかったな、エルフのお嬢ちゃん達」
両手を掲げ無手であり、更には少女達をどうこうするつもりは無いことを示す。
「てっきり魔獣の類いかと思ったんだ、本当に悪かった」
そう、誠意の籠った言葉を紡いだ。
そしてその青年の言葉を聞いた姉妹エルフの二人は、幾分か警戒心を解きほぐす。
二人の雰囲気の変化を敏感に察知した青年は、すかさず追撃をかけた。
「一応自己紹介をしておくと、俺は鍛冶師のロジカ。ここに来たのは嬢ちゃんがさっき言葉にしていた、<勇者>の武器を造る素材探しの為だ」
ロジカと、そう告げた男は続けてこう言葉にした。
「出来れば、俺をエルフの里まで案内してくれないか?」
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