悪徳勇者からの依頼

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 <Ⅱ>  事の発端は五日前の事。  <ザスカニア>と云う街にて鍛冶屋を営む青年――ロジカの元に一人の客が舞い込む。  裏通りにある全体的に薄暗い印象のその店に、躊躇無く無精髭を生やした三十代ほどの男が入ってきた。  そしてカウンターに頬杖を付き、眠そうにあくびをしていたロジカに声を掛けた。 「すまんが、ここが<龍殺しの武器>を打てる鍛冶屋で間違いは無いか?」  そう低く落ち着いた、だが同時に威圧するかのような声が狭い店内に響く。  ロジカはあくびをなんとか噛み殺しながら答えた。 「えぇ、そーですよー」  何ともやる気の無い、ひどく気の抜けた声であった。  それに対し、厳つい無精髭の男は眉をひそめ、疑わしげにロジカを見詰める。  一方ロジカはそんな視線を気にも留めず、小指を耳の穴に突っ込み、ホジホジ、ホジホジと耳カスを取り始めた。  客を舐め腐ったその態度に、男の目尻がピクピクと痙攣(けいれん)する。  耳穴から小指を抜き顔の前まで持ってくると、フッと息を吐き、カスを飛ばす。  そしてチラリと、男の顔を見遣る。 「まあ、何だったら龍どころか……<魔王殺し>の武器でも打ってやろうか?」  そう言ってニヤリと、挑戦的な眼差しを向けた。
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