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「何で謝るの?僕は……まぁ、学校には行ってみたいけど、お母さんが謝る事じゃないんだから。そのかわり、お兄ちゃんとお姉ちゃんにいっぱい学校であった事を聞くんだ。…………あ、もう会社の時間じゃない?」
「……そうね、夕方にお兄ちゃんとお姉ちゃんに質問攻めしてあげなさい。じゃあ、ゆーくん、行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい」
手を振ってお母さんを見送った。
少年は5人家族だ。お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、少年の5人。
お母さんは、平日は仕事の前後お見舞いに来てくれる。休日は一日中いることもしばしばある。
お父さんは、仕事が忙しいから平日は来ないけど、休日は来てくれる。
お兄ちゃんは学校が終わってから。部活もしてて遅くなるし、休日も試合なんかが無い限り来てくれる。
お姉ちゃんも学校が終わりしだい、何時も一番乗りで病室に来てくれる。部活もしてないみたい。昔、何で部活をしないのか聞いたら、
「ゆーくんと会う時間が減っちゃうからだよ」
って言ってくれた。嬉しかった。
少年は自覚していた。僕は家族に愛されてる。わざわざ病院の近くに引っ越して来て、面会時間を毎日ギリギリまで使うなんて愛されてなかったらありえない。
僕は愛されてる。でも、そのお返しが出来ない。本によると、世間一般では、親を安心させるものは勉強だと少年は思った。でも、僕に当てはまるとは思えなかった。
普通、勉強すれば良い高校にいって、良い大学に行き、良い所に就職出来て、将来が安定する。子供が一人前に育つのを見て、親も良かった、と胸をなで下ろすのではないのだろうか。
でも、それは少年に当てはまらない。勉強出来ても、身体が弱いのだ。高校、大学は通信制になるに決まっているし、もし、大学を卒業したとしても、自分がなれる職業なんて思いつかなかった。
少年は未来が見えなかった。ずっとこの生活が続くなんてありえるだろうか。少年はありえないと思った。
考え事をして疲れたのか、しばらくすると少年は静かな寝息をたてはじめた。
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