その一

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「あの……生姜焼き弁――」  最後まで言い終わらないうちに、哲夫の蹴りが光一の腹をえぐった。  床にうずくまり、悶絶する光一の顔を、哲夫はスリッパで踏みつける。 「俺が食いたかったのは、焼肉弁当。――そう言わなかったか」  返事をしようにも、口元を強く踏まれて言葉が出ない。  どうやら間違って買って来たらしい。気をつけてはいるものの、いつも何か間違ってしまうのだ。そしてその度、ご褒美と称したいじめ、制裁が光一に襲い掛かった。 「す……すみません……すぐ取り替えて……」
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