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入場門から広場に入り、来客が石畳をしばらく歩くとエデンご自慢の大庭園がある。緑鮮やかな木々には繊細な手入れが施され、
キリンやゾウ、ウサギやトラなどの造形を楽しめる。
その造形に囲まれた中心には七人の勇者であろう彫像が燦然と輝いている。
「受付には身分証明書と、入学金1万ばかしと、あと…」
金太郎が指折り必要な物を確認していると、
「身分証明書、身分証明書、」
目をつぶり、膝に手をつくハイロ
「役所でもらえるだろ、自分が何者かとか、」
ハイロは首を振る
「1万、1万って1万イェンか?」
1イェン=100円
当たり前だろと金太郎が息を吐くとハイロはやはり絶望した。
「おい、まさか無いのか?」
カイドー大陸の中でも特に貧しいカヌイ村からやってきたハイロは1万イェンはもちろん、100イェンですら稼げないほどであった。
金太郎は肩を震わせ、
「無いなら稼ぐだろ!
勇者、天下の勇者さまだぞ!?高給、高待遇、高名誉!!それがたった1万ぽっちでなれるならよ!!」
ハイロには返す言葉もなく肩を落とした。
「試験があるって聞いててさ、それに受かれば候補生になれるって話だったからさ。」
暗い顔をしながらハイロの口から小さな言葉が漏れる
「試験?ああ、そう言うことか。」
金太郎にも心当たりがあった。
「やっぱり!?」
急に目の色を変えて金太郎に顔を近づける
「やっぱり試験ある!?」
「近い!顔が近い!」
ハイロの顔を手でさえぎり、
「あるにはあるけど、お前さん、どんな試験かわかってるのか?」
…いや、わかってない
とぼけたこの顔に、金太郎は応えた
「特待候補生試験だ。」
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