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「来たか、とうとう」
息を吐いて、緊張をゆるめようとする。
ハイロにとってここまでの道のりは長く、厳しく、険しく、辛いものだったのか。
いや、カイドー大陸からの旅だけではないだろう、彼がなぜ勇者を目指し、特待入試に受からなければならないのか、その理由にこそ何かが隠れているはずだ。
「ふう、緊張してきた。」
「あ、けど身分証明書ない」
「やべー!試験以前の問題が!」
ソワソワ、モタモタするハイロの脳天にゲンコツが落ちる
「どうでもいいけど早く受付を終わらせてくんねーかな!?」
受付のお姉さんが長い髪を揺らし、怒鳴り声を浴びせた
「10時すぎてんの!わかる?実際さ、二人とも失格なんだけど?」
えっ、俺受付終わってんだけど
的な顔をして自分を指差す金太郎
「あんたこいつの仲間だろ?連帯責任だボケ」
に向かって少し綺麗な化粧の濃いお姉さんは吐き捨てた。
「去年こんな口の悪い女いたかな?顔が悪けりゃぶん殴るとこだ」
と口から飛び出しかけた金太郎の背後に、
「どしたの遊馬(あすま)先生。時間すぎてるよ?」
いきなりメガネの白衣が現れた。
「盾尾……先生。」
二人は驚いた、驚いた。
二人はある程度自分の腕に覚えはある。強くはないが、弱くもないくらいに。けど気づかなかった。白衣の存在に。いつから?歩いてきた?いや、急に…
「君、どしたの?早く受付済ませなさいよ」
ハイロを見て白衣はメガネを光らせた。
「身分証明書がなくて、」
間髪いれず
「名前と住所わかる?」
急な流れに言葉も出せずうなづいてしまった。もちろんそれくらいハイロには書けるだろうけども。
「ならいいよ、早く来なよ。君は?」
金太郎が指をさされた
「あ、受付済んでますよ」
すると、
「そ。じゃ遊馬先生、その受付の机と椅子てきとーに片して早く来てくださいね。」
スタスタと歩いて行く白衣。
それについて行く二人、
エデンの教師たち2人に会ってしまったハイロと金太郎。その異様な雰囲気に、ますます好奇心と恐怖にも似た期待を増やしていった。
少し歩く。
真っ白い廊下、目線より少し上に燭台が等間隔で備え付けられている。いくつか部屋も通り過ぎた。この部屋のどれかで何かの授業をしたりするんだろうか。
階段は上がらなかった。
「さ、着いたよ。さっさと中へ。」
重そうな扉を軽々と手前にメガネ白衣が引くと、まぶしい光が2人を包み…
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