伝説のはじまり

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やけに低いマイクスタンド 入口から左奥、壇上でアリーシアはマイクの位置を確認している。 ぼんぼん! 「きこえるー?」 アリーシア直属のお手伝いさんシンシアが両腕で丸を作った 「おし。」 一瞬ざわついたが、会場はアリーシアのノンビリとした雰囲気に包み込まれて、彼女が七人の勇者であることを感じさせない空気になっていた。 そこで金太郎が、 アリーシアのことを簡単に話すと、ハイロは何度か細かくうなづいて、 「あーなるほど。」 とだけつぶやいて遠くの壇上を再び見据えた。 「あーおほんほん。」 咳払いを二つ置いて、 「ようこしょ皆さんエデンへ!」 と、いきなり噛んで見せた。 まあそんなことはいちいち気にせず、両手の指をクルクル回して 「わたしが学園長です、えっへん!えらいんです!」 そのセリフが受験生最後尾まで届く間は沈黙だったが、やはり異様な雰囲気のアリーシアに違う意味で再び波がざわつきとなってうち返って来た。 「まあいいや、ふしゅん。長い話はつまんないし、わたしが。」 アリーシアはその場にあぐらをかいて膝に肘を置いた。 何人かの受験生や教師たちは、さっき散々マイクの位置とか確認してたのに、もうマイク使わないのか?とツッコミを心の中でしてしまった。 その体勢のまま、アリーシアは 「まあね、要するにさ、一般入試の人は二階、それ以外の貧乏人はわたしについてきなさい。」 またざわつきを生み出した。 今度のは、ざわつきひとつひとつが複雑な意味をなす。貧乏人という言葉を拾うもの、勇者直々の試験なのかという戸惑い、期待、場所は?去年と同じ展開か、内容が違う?ペーパーテストは? 「あー静粛静粛。」 両手を広げ、上下に振る。 そしてアリーシアはつまんなそうに衝撃的な発言をする。 「クロウ・コクリュウって子と、シロウ・トワ・ホワイトソールって子、2人は職員室に行きなさい。君たち合格だから。」
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