伝説のはじまり

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皆を叩き起こしたのは言うまでもない。 「シンディ!筆と墨!」 ステージに掲げられた大看板へジャンプして、もらった大きな筆でバッテンを描き、 墨の入ったバケツに筆をつっこみまたアリーシアが飛んだ ×前夜祭 ○入学試験 看板の使い回しだ! 試験は10時開始で募集していた。 9時半、アリーシアたちエデン関係者たちが試験準備に奔走している頃、 「とうとう来たか…エデン。」 穴あきマントが乾いた風になびく。 かけていたゴーグルを額にずらして、入場門を見上げた少年は息を漏らした。 「よーし、頑張っちゃうもんねー」 肘まである手袋をはめた手のひらにこぶしをぶつけ、首を鳴らしながらその敷居をブーツでまたいだ。 この少年、あとでわかることだが名前をハイロと言う。ここから北にあるカイドー大陸から海を越えてこのドウカン大陸にやってきた。 肩に大きなバッグをさげ、ボロ布をぐるぐる巻いた、背中を隠すほどの大きな何かを背負っている。 「今何時だ?」 門を抜けてすぐそこに寄りかかっていたやつに声を掛けた 「…。」 まぶしい青い髪をした女の子だった。口までマフラーを巻いた、愛想の無い感じの。 けれどもマフラーに手をつっこみ、しばらくゴソゴソ、 服の中にしまった懐中時計を取り出し、 「9時半ですね」 ハイロはありがとうとつぶやいてその場にあぐらをかいた。
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