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―――
「ちょっとハオン!ギャラリーが増えたみたいよ?」
「そうだね…そろそろ負けを認めたらどうだ?兄さんは私の方が好きだって」
「い~やア~ルね~!
お兄ちゃんはウチを一番に愛してるんだから!!」
そう二人の喧嘩の原因は兄。
午前中の稽古終わりにもらった肉まんのどちらが大きいか。
そんな些細なことで大喧嘩に発展するのは日常茶飯事。今では九龍雑技団の演目の一つとして見せ物にされてしまった。
それでも二人はこれ幸いとばかりに、集まって来た観客達に自らの兄ラヴァーを自慢し合っている。
みんな得するWinWinの関係だ。
しかし今日はいつもと様子がおかしい。
観客達は皆、柳葉刀や偃月刀で武装している。
「あの二人をボスの手土産に持って行くネ!突撃アル!!」
武装した集団が四方八方から押し寄せて来る。
「ウチらの喧嘩を邪魔すんな!!」
トーンはワイヤーに吊られた様に高空へと飛び上がる。
もちろん右足を上げ、両手を鳥の翼に見立てたお決まりの"飛翔のポーズ"付きだ。
それはさながら空中浮遊!
身動き一つ取らずに武装集団の周りを飛び回る。
男達は狐につままれた様に右往左往する。
するとどこからか4本の矢が飛来し、混乱する者達の足を貫く。
「姉さんには…負けない」
ハオンの箜篌は特別製で、弦の部分がしなり、弓としての使用が出来る。
いわゆる暗器と呼ばれる物だ!
トーンは飛翔のポーズを取ったまま、右足をゆっくりと左右に振る。
驚くなかれ!それだけで周囲の男達が次々と吹き飛ばされていく!
一様に無数の打撃痕を残し、男達は伸びきっている。
「これが中国4000年の歴史…いや4000発のキックの重みアル!」
そう!毎秒4000発!!その蹴りは音速を超える。あまりにも早すぎる為に常人には足をぶらぶらとさせているようにしか見えないのだ!!
「くそぉ!妹だ!妹を狙え!!」
黒服に身を固めた男達は、ハオンに向かい遮二無二突っ込んで行く!
「無駄死にしたいのね…」
ハオンは手元で空気をこね固める様に気を練ってゆく。
霊感の強い者や気功の達人ならば彼女の手の中に陰陽の印を感じる事が出来ただろう。
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