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全てが染まっていた。
綺麗に澄んだ青色だった空も、瑞々しい緑色の葉が生い茂っていた木々も、木造の小さな茶色の家も、
瞳に映る全てのものがただ一つの色に染まっていた。
全てを焼き尽くしている---赤色に
「なんだよ…これ」
あまりにも現実味の無い光景に震える声が自分の口から漏れる。
夢だと思いたかった。もしくは、ただの幻だと。
けれど、空高く燃え上がっている炎を煽る風が吹き付け、その熱を伝える。
これが夢でも幻でもないのだと告げるように。
「……っ」
熱風に煽られ後ずさった自分の足に、何かの感触が当たった。
ゆっくりと視線を足元へと向けて…息を呑んだ。
「---!」
言葉が出なかった。
足元に当たった感触は、目の前で燃えている炎に焼かれて黒い塊となった、元は人間だった死体のもの。
「う……っ」
喉元から込み上げる吐き気に思わず口を抑える。
そのまま周りをよく見ると、同じような死体がいくつも転がっていた。
(こんな…こんなの酷すぎる)
あまりにも残酷な光景から目を逸らそうとした瞬間、
「---っ!」
目の前が先ほどよりも濃く鮮やかな赤色に染まる。
見開かれた瞳に激しく燃える炎が映し出された。
(次は、僕の番か…)
恐怖で動かすことの出来ない身体に、逃げることを諦めて目を閉じる。
内側から焼き尽くされるような熱と激痛を感じたのを最後に、意識は深く闇の底に沈んでいった。
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