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「奇跡ねぇ」
そう呟き、考え込む目の前の金髪イケメン。
暫くそのまま考え込んでいたが、突然その顔にニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべたかと思うとその顔のまま俺に向かって言った。
「それじゃあ、今から奇跡を起こしてあげるよ」
そう言って、徐に右手を俺に向けた。
それを見た瞬間に思わず身構えるが、金髪イケメンは相変わらず気味の悪い笑みを浮かべ、俺に手を向けたままだ。
「おい、お前一体何を……あれ?」
何か今、俺の声普段よりも高くなかったか?
それに何気無しに右手で喉に触れた時に腕に二の腕の辺りに何か柔らかい物が触れた。
「!?」
ま、まさか、そんな事が……。
恐る恐る喉に当てた右手を下ろしていき、そのまま胸に当ててみた。
……………………………ある。
あ、あるぞ……。リンゴちゃんが……。
ハッ!!まさか!
左手を当てて確かめる。
……………………………無い。
「おい!テメェ!俺の体に一体何をした!?」
「あははは!君が奇跡を起こせって言うから起こしてみたんだよ。はい、これ」
大笑いしながら金髪イケメンは何処からともなく姿見の鏡を出して、俺の前に置いた。
「な、な、なんじゃこりゃぁぁァァァァ!!?」
その姿見に写っていたのは俺が着ているのと同じ学校の男子用の制服を着た美少女だった。
尻の辺りまである軽くウェーブの掛かった綺麗な黒髪。
前髪は綺麗に左右に別れているが、中心から胸くらいまでの流さの同じように軽くウェーブの掛かった髪の一房だけ額から右の口端に斜めに垂れている。
目は黒目の若干つり目で気の強そうな印象を受けるが、その目は驚愕に見開かれていた。
そして、俺が動けば同じように鏡の中の美少女も動く。
それがこの美少女が俺自身である事の何よりの証拠だった。
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