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今は部屋の前の廊下の壁に凭れている俺だが、始めはトゥーナにずっと付き添うつもりでいたのだが、マリアさんとメイド長に部屋から追い出されたてしまった。
だから、心配で仕方ない。
今は、ただマリアさんに言われた「トゥーナを信じてあげて」という言葉に従うしかない。
「トゥーナ……」
そう彼女の名前を呼んだ時に目の前の扉が少し乱暴に開いた。
「生まれました!男の子です!」
「!」
中から出てきたメイドの言葉を聞いた瞬間に俺は部屋の中に飛び込んで、そのままベットに寝かされていたトゥーナの所まで駆けつける。
「トゥーナ!」
「…ジュン…大きな声…出しちゃダメ…」
「あっ、ごめん」
トゥーナはかなり疲れているようだが、それ以外は特に問題は無さそうだった。
そして、トゥーナの顔の横で眠っている小さな命。
それを見たら何か急に足から力が抜けて、その場にへたり込んでしまいそうになる。
それは根性で堪えたけど、堰を切ったようにボロボロと溢れ出す涙は止められなかった。
「トゥーナ……ありがとう」
トゥーナの額に自分の額をくっつけて自然に頭に浮かんだ言葉をそのままトゥーナに告げた。
「…うん…私からも…ありがとう…」
それから1分くらいその姿勢のままでいた。
「…ジュン…」
「どうした?」
「…この子の名前…決まった…?」
「うん、決まってる」
体を起こして、涙を拭って告げる。
「レイト。この子の名前はレイト=ウェーバー」
理由はよく分からないけど、今日の朝になって急にこの名前がこの子には一番しっくりくると思ったのだ。
「…レイト…。…レイト=ウェーバー…いい名前…。
…これからよろしくね…レイト…」
トゥーナはそう言って、慈しむようにレイトに向けて微笑んだ。
俺もレイトを見て小さく笑みを浮かべているのを自覚しながら口を開く。
「これからよろしくな。レイト」
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