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「――!」
誰かの声が聞こえて、体がゆさゆさと揺さぶられた。
「うー……」
俺は小さく唸りながら、ブランケットを引っ張って顔を覆う。
しかし、これで諦めるくらいなら始めから起こしに来ている筈もなく、もう一度、今度はさっきより強く揺さぶられた。
「にぃ、おきて!」
「はい、起きたよ」
揺さぶりと一緒に聞こえた女の子の声に俺は素早くブランケットから顔を出して、上半身を起こした。
すると、目の前の同い年くらいの白いふわふわした髪に薄い赤色の目でフリルがたくさんあしらわれた可愛らしい水色のワンピースを着た女の子がにぱっと笑顔になった。
「にぃ、おはよっ!」
「うん、おはよう。マリー」
彼女は『昨日』5歳になった『双子の妹』のマリーだ。
「にぃ、なんかへん」
可愛らしく小首を傾げるマリー。
まぁ、流石に昨日まで同じような笑顔で「おはよっ!」って返していた俺が急に落ち着いた感じで返したら違和感を覚えるのは当たり前だよな。
「かぜひいたの?げんきないよ?」
「そんな事ないよ。
ただ、今日から5歳だからね。
ちょっとだけ格好をつけたいだけだよ」
「?」
「簡単に言うと父さん達、大人の真似をするって事」
「おー!じゃあ、わたしもやる!」
両手を挙げてバンザイみたいなポーズをしながらマリーは力強く宣言する。
「んー、マリーは今は無理して大人の真似するより、今の方が可愛いから必要ないと思うよ」
自分の顎に手を当てながら言うとマリーはまた嬉しそうににぱっと年相応の可愛らしい笑顔を見せた。
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