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マリーに手を繋いで行こうと言われ、わざわざ可愛い妹のお願いを断る理由も無いから手を繋いで食堂を目指して歩いていく。
食堂に着くまでの間、何がそんなに楽しいのかマリーは終始笑顔でスキップでもしそうな程ご機嫌だった。
食堂に着くと既に父さんと母さんが椅子に座って、何でもない話を二人で話していた。
父さんは闇夜のような黒髪黒目で面影が何処と無く最強の二刀流ゲーマーに似ている。
母さんは白にも見えるくらいの白銀の髪と金色の瞳で天使ちゃんによく似ている。
更に言えば、父さんは黒い長袖に黒いスラックスと全身黒くて、母さんはクリーム色の長袖に小豆色のロングスカートという二人とも貴族とは思えない程地味な格好だが、貴族っぽい服はパーティーだけでいいというのが二人の共通認識なのだ。
二人は食堂に入ってきた俺達に気がつくと笑顔で迎えてくれた。
「二人ともおはよう」
「…おはよう…レイト…マリー…」
「おはよっ!パパ、ママ!」
「おはよう。父さん、母さん」
俺が挨拶を返すと母さんは俺の言葉遣いにマリーと同じ様に驚いたけど、父さんは何か得心いったという顔をしていた。
「…ジュン…どうしよう…レイトが…変…」
変……って。
母さんの言葉に微妙に傷付いていると父さんが苦笑いを浮かべながら、口を開いた。
「まぁまぁ、トゥーナ。そう言ってやるなよ」
「…だけど…昨日まで…」
「確かに昨日まではマリーとほとんど変わらない感じだったけど、今日から5歳だからな。
色々と心境の変化があったんだろ。
魔力の扱いみたいなのは今日から学んでいくわけだしな」
「…そうなの…?…レイト…」
母さんが俺の方を向いてそう聞いてきた。
「うん、そうだよ」
「…そう…ごめんね…レイト…」
「いいよ。母さんだって戸惑ってるのは分かってるから」
目を伏せて謝る母さんをフォローするが何となく雰囲気が暗くなってしまった。
「そんなに落ち込むなよ、トゥーナ。
別にグレちまったわけじゃないんだからさ。
今日はレイトとマリーの誕生日なんだからしっかり祝ってやろうぜ?」
「…うん…そうだね…。
…今日は…二人の誕生日だもんね…」
父さんの言葉に母さんは小さく笑みを浮かべた。
それと同時に暗い雰囲気も無くなった。
助かった。
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