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「トゥーナ、ちょっとレイトと稽古場に行ってくる」
「…うん…分かった…」
父さんの言葉に頷いた母さんの顔に先程の悲痛の色は無かった。
代わりにさっきマリーに向けたのと同じ優しい微笑みを浮かべて、俺を撫でた。
「…レイト…きっとこれから…辛いこと…たくさんあると思うけど…お母さん達は…ずっと…レイトの味方だから…。
…それに…属性が無くても…それだけの魔力があれば…きっと…強くなれるよ…」
「マリーも!マリーもにぃのみかただよ!」
「母さん、マリー……ありがとう」
ちょっと泣きそうだ。
「ほら、行くぞ?」
父さんは軽く俺の頭をポンポンと叩いて促す。
それに黙って頷いて、父さんと一緒に部屋から出て、稽古場に向かった。
稽古場はこの屋敷の地下にある屋敷の平面積と同じ広さのある場所だ。
ただ、建物の地下という事もあって、模擬戦などの本格的な実戦訓練を行う事は出来ないので、もっぱら魔法の練習や戦い方の文字通り稽古をするのに使われるのが一般的だ。
その稽古場の真ん中で俺と父さんは向かい合って立っていた。
「さて、先ずは少し話をしようか」
話?
「昨日の夜、正確には今日の午前0時頃に俺の所に1つの念話が飛んできた。
念話の相手の話は近々俺の周りに転生者が現れるからソイツの面倒を見てやってくれないかという物だった」
それを聞いた瞬間、俺は思わず悲鳴を上げそうになった。
神の言ってた野暮用ってこれの事か!
「その転生者ってのは、お前の事でいいんだよな、レイト?」
「はい、仰る通りです」
こう答える以外の選択肢が無かった。
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