第2打席☆ミライゲーム☆

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「ええっ? 推薦の話って東南なの? すごいじゃない! さすが佑哉君だね。じゃあいったい何を迷っているのかしら……」 ピシッ! まただ。 まるで頭に亀裂が入るような痛みに、さつきの顔が歪む。 「佑哉……、自分の事…あんまり言わないから……」 さつきは思わずこめかみを押えた。 心臓の音が反響し、耳鳴りがする。 それに暑い。 夏とは言え、この暑さは普通じゃない……! 頭の中を何かが廻る。 夜のグラウンド。 佑哉が悔しそうに唇を噛む。 次に見えたのは眩しくて暑い日。 それ以上に熱い声援。 子供達の笑い声……! 「さつきちゃん……? どうしたの、真っ青よ! 気分でも悪いの?」 宇佐美ちゃんが呼んでいる。 (なんでもないの、ちょっと暑さにやられただけ……) 自分の言葉が頭の中を反響し、世界が回る。 そこへ、グラウンドの部員が宇佐美ちゃんに気が付いて声をかけた。 「おーい、マネージャー! マシン用のボール持ってるかー? そろそろバッティング練習始めるんだけどー」 宇佐美ちゃんは慌てて立ち上がると、グラウンドに駆け寄ってネット越しに叫んだ。 「後で、持って行きます! でも、ちょっと待ってて。今、具合の悪い人がいて……私、保健室に……!」 彼女が振り返ると、そこにさつきの姿はなかった。 代わりに、磨いたばかりのボールが一つ、ベンチからコロンと落ちた。
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