第3打席☆スイッチプレー☆

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「あいつは忘れてるんだろうな、ガキの頃の約束なんか。でも、俺の目標はあの時から何一つ変わっちゃいない」 バカみたいだと自分でも思う。 絶好の環境を約束されたも同然なのに。 「俺の横にはあいつがいて……いつかあの時のプレーを、武山高のグラウンドでしてみたい。あいつも同じ気持ちだって信じてたのに。俺とのコンビプレーなんて誰とでもスイッチできちまうもんなのかよって……なんか腹立って、あの試合の前日ケンカしたんだ。もしかしたら、あいつも喧嘩の事、気にしてたのかもしれない。……デッドボールなんてくらいやがって」 顔が勝手に後悔で歪む。 「都立武山って俺にとっちゃレベル高くてさ。あいつは楽勝だろうけど俺は危なくて。それでけっこう受験勉強も頑張ってたんだ。でも……奴の一言で全部抜け落ちたって言うか、自分がどうしたいのかも……」 思いつくままを口にしていた俺は、隣に目を移して青くなった。 「ちょっと待て! なんだよさつき、なんで泣いてんだよ!」 さつきがこっちを見つめたまま、ポロポロと涙を流している。 肩が触れそうなくらい近くで、ピンク色の頬と唇が何かを言いたそうに震える。 考えてみれば、こんな間近で女の子が自分を見てる事なんて今までなかったし、当然泣かれた事なんてない! 慌てて自分の汚れたタオルを、さつきの顔に押し付けた。 「あああ、ごめん、これは汚ねー……! おい、やめてくれよ。ホントにどうしたんだよ!」 こっちが泣きたい。 さつきはその汚れたタオルを離さずに、顔を埋めてしまった。 「……忘れてなんかいない……」 「何?」 タオルの中から聞こえたくぐもった声に、俺は眉をひそめた。 「あたしわかる……その人の気持ち。きっと忘れたわけじゃない。でも佑哉の為には、その方がいいと思ったんだよ。だって佑哉、上手いもん。チームの誰よりも上手だもん。自分なんかと弱い高校で一緒にやるよりも……強い高校に行ったほうがいいと……その人も思ったんだよ」 真剣な目から、また涙が溢れる。 「………」 その涙に、俺の中で言いようのない罪悪感が湧き起こった。 本当は自分にもわかってる。 カッコつけて、意地を張って、迷いからくる苛立ちを、あいつのせいにしているだけだって事。
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