63人が本棚に入れています
本棚に追加
○●○●○●○●○●○●○●○●
さつきは──固まっていた。
耳元でやけに穏やかな佑哉の声が響く。
でも自分の心臓の音の方が、はるかにうるさい。
(なんだろう、さっきの佑哉の目。
あんなの今まで見たことないし、なんだか見ちゃいけないものを見てしまったような気がする……)
顔が熱い。
ううん、耳まで熱い。
どうしよう、身体が動かない!
「……なんでだろうな。あいつとさつき、いつも同じような事を言うんだ。でもさつきが言うとなんか素直に聞ける。すげえ、不思議。……だからさ、お前もがんばれよ、さつき。俺、一緒にいてやるから……」
(がんばれ? 何を?)
でも佑哉がこんな優しいなんて、ぜったい変。
佑哉にこんな事されて、このままでいたいあたしも変。
すると佑哉は少し腕を緩めると、さつきのまぶたに静かに唇を落とした。
(ふ……ふええええぇぇっ?!)
硬直するさつきに構わず、佑哉は真剣な瞳でじっと見つめてくる。
(ちょっ……、なんであたし幼馴染の佑哉とコンナコトになってるの? なんで次の展開を待っちゃうの?!)
胸が甘くドキドキと高鳴る。
佑哉の顔がゆっくりと近づいてくる。
目を閉じそうになる自分と、開けようとする自分がせめぎあう。
(なんか……ヤバイ! そうだ、こんなのあたしと佑哉じゃない!)
さつきは、トンと佑哉の胸を押して立ち上がった。
「さつき……?」
不安そうに佑哉がこちらを見上げる。
唇が震えて、声がうまく出てこない。
最初のコメントを投稿しよう!