第3打席☆スイッチプレー☆

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○●○●○●○●○●○●○●○● さつきは──固まっていた。 耳元でやけに穏やかな佑哉の声が響く。 でも自分の心臓の音の方が、はるかにうるさい。 (なんだろう、さっきの佑哉の目。 あんなの今まで見たことないし、なんだか見ちゃいけないものを見てしまったような気がする……) 顔が熱い。 ううん、耳まで熱い。 どうしよう、身体が動かない! 「……なんでだろうな。あいつとさつき、いつも同じような事を言うんだ。でもさつきが言うとなんか素直に聞ける。すげえ、不思議。……だからさ、お前もがんばれよ、さつき。俺、一緒にいてやるから……」 (がんばれ? 何を?) でも佑哉がこんな優しいなんて、ぜったい変。 佑哉にこんな事されて、このままでいたいあたしも変。 すると佑哉は少し腕を緩めると、さつきのまぶたに静かに唇を落とした。 (ふ……ふええええぇぇっ?!) 硬直するさつきに構わず、佑哉は真剣な瞳でじっと見つめてくる。 (ちょっ……、なんであたし幼馴染の佑哉とコンナコトになってるの? なんで次の展開を待っちゃうの?!) 胸が甘くドキドキと高鳴る。 佑哉の顔がゆっくりと近づいてくる。 目を閉じそうになる自分と、開けようとする自分がせめぎあう。 (なんか……ヤバイ! そうだ、こんなのあたしと佑哉じゃない!) さつきは、トンと佑哉の胸を押して立ち上がった。 「さつき……?」 不安そうに佑哉がこちらを見上げる。 唇が震えて、声がうまく出てこない。
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