第1打席☆チカクテトオイ☆

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●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 思ったとおり、佑哉は自宅の近くの区営グラウンドにいた。 ここは普段、小学生のチームが利用する公園内のグラウンドだが、佑哉はいつも家に帰った後に軽く素振りをしに来るのだ。 公園の灯りが夜のグラウンドをぼんやりと照らす中、佑哉は一心にバットを振っていた。 昨日の公式戦のバッティングが悔やまれるのだろう。 がむしゃらに、腕も折れよとばかりに、ウエイトを着けたバットを振り回している。 その気持ちはさつきにもよくわかる。 悔しくて、情けなくて、──焦る。 自分達はもう三年生だ。 今のメンバーでプレーできるのもこの夏が最後。 特に佑哉は、この辺りでも有名な高校の野球部から誘いを受けている。 なんとか納得できる形で、今の仲間達との中学野球に区切りをつけたいのだろう。 「そんなめちゃくちゃなスイングで、いくら振ったって意味ないよ。……バカみたい」 気持ちは痛いほどわかるのに、そんな言い方しかできない。 「うるせーよ、さつき! だいたいお前はいつもそう……」 振り返った佑哉は、グラウンドを囲む暗い金網の影から出てきたさつきを見て、言葉を切った。 「あ……、いや悪い……あの……」 「いいよ、別に。慣れてるし。それよりやるならちゃんと振りなよ。見てあげるから」 さつきはスタスタと濃紺の制服のプリーツを揺らしながらグラウンドに足を踏み入れ、近くのベンチに座った。 佑哉はちょっと驚いたようにその様子を目で追っていたが、やがて困ったように口ごもる。 「お前……、制服のまんまじゃん。家に帰ってないのか? 家の人が心配……」 「しないよ。何言ってんの今更。佑哉と一緒だと思ってるよ。ほら早く!」 佑哉はまだ何か言いたそうに口を開きかけたが、途中で諦めたようだ。 小さく肩をすくめ、素直にバットを構えた。
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