63人が本棚に入れています
本棚に追加
次の言葉が出ない様子の佑哉を、さつきはいたずらっぽく覗き込む。
「だーって佑哉、ごまかすのとか下手くそじゃん。早くすっきりして、自分のプレーができるようになるといいね」
そう言うと、さつきは佑哉の横をすり抜け、出口に向かって歩き始めた。
「え、おい! もう道も暗いぞ。ちょっと待ってろよ、あの……家まで送って……」
慌ててベンチに戻り、帰り仕度をする佑哉を置いて、さつきはグラウンドを出た。
「気持ち悪うー! やめてよそんなの。じゃーね佑哉! また明日も、このさつき様がフォームチェックしてあげるからねー!」
スカートを翻し、小鹿のようにさつきは公園の小道を駆けていった。
「さつき……」
残された佑哉は、バッグに詰め込んだスポーツタオルを握り締めたまま、ただその後ろ姿を見送っていた。
最初のコメントを投稿しよう!