第2打席☆ミライゲーム☆

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期末テストが終わったばかりの学校は、開放感と 夏休みへの期待で生徒みんながかなりハイになっ ている。 とは言え、受験生が大半を占める三年生だけは少 し複雑。 その結果によっては、この先の苦労の度合いも 違ってくるというものだ。 どんなに呑気なタイプでも、この頃になるとさす がに少々落ち着かなくなるのは例年の事らしい。 それでも、夏のこの時期は野球少年にとってはま さにシーズン真っ只中。 青涼中硬式野球部の三年生も、部活と受験の両立 を余儀なくされていた。 先週から始まった、関東大会出場を賭けた地区 リーグ戦を勝ち抜くために、今日も放課後練習に 汗を流している。 初戦で惜敗した青涼中にとって、次の土曜日の二 回戦は絶対に負けられない大事な一戦だ。 さつきはグラウンドを囲む緑色のネットの隙間か ら、佑哉が仲間達と守備練習をしているのを見て いた。 ここは外野の、ダイヤモンドからはかなり離れた 場所だが、動きや走り方で佑哉を見分けられるさ つきにとっては何の問題もない。 佑哉のポジションはショート。 遠目からでも、なんとなく覇気がないのが見て取 れる。 「あの…良かったら向こうにある、もっと近くのベ ンチで見れば?」 遠慮がちな声に振り返ると、カゴいっぱいのボー ルを抱えたジャージ姿の女の子が立っている。 野球部マネージャーの宇佐美翔子だ。 小柄で色白、ちょっぴりおとなしい彼女はウサギ ちゃんのイメージから宇佐美ちゃんと呼ばれて、 部員たちからも可愛がられている。 「ううん、いいよここで。すぐ帰るから」 さつきは小さくかぶりをふって、またグラウンド に目をやった。 「佑哉くんのファン?」 そのまま行ってしまうかと思いきや、彼女はそん な風にさつきに聞いてきた。 (ファン?!) あのピーチクうるさいだけの女達と一緒にされて はたまらない。 そんな気持ちが顔に出ていたのか、さつきが振り 返ると彼女は戸惑ったように小首を傾げた。 「…違った?ごめんなさい。佑哉君だけしか見てな いようだったから…」 佑哉を目で追っていたのは事実だから仕方ない が、それにしても女の子って目ざとい。
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