神の使いと堕ちた光

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あれから数日、少女の予言通り、町は大干ばつにみまわれたが、そうとはわからないほど、活気に溢れている。 だが、少女はその光景を直にその目で見ることはない。 「町は大丈夫なようですね」 直に様子は見えなくても、少女は町が無事なことを知っている。すべてを見通すその瞳は、見えないはずの町の様子をとらえている。 「それで、あなたは誰ですか?」 そして、同じく見えないはずの場所である聖堂の影にある人影も。 「あーあ、ばれちまったか。たくっ、何でわかるんだよ」 人影が少女に歩みよったため、その姿が露になった。 少女より頭一つ分以上高い長身で、背中の中程まである漆黒の髪を首の後ろで一つにまとめ、背には漆黒に染まった天使のような大きな羽がある男だ。 「人間ではなかったのですね。見たところ、堕ちた天使のようですが、私に何か用でしょうか?」 少女は男に顔を向けることなく言い放つ。その恐怖が一切含まれていない声は、小さな聖堂に静かに響いた。 「クククッ正解だ。ちなみにたいした用はねぇよ。ただ、神の御遣いなんて呼ばれてる人間に興味を持っただけだ」 男は不適に笑いながら少女に近づき、顔を自分に向けさせた。 「へぇ、ずいぶん可愛いじゃねぇか。俺のものにしたくなるな」 「私がなると思えますか?」 男は少女からはなれ、また笑う。その声は聞いた者を確実に不愉快にさせるだろう。 「クハハハハッ。お前、俺が怖くねぇのか?人間じゃない、堕天使だぜ?」 耳障りな声に軽く顔をしかめながらも、凛と言い放つ。 「堕天使だから、なんですか?私は文献でしか堕天使を知らない。故に、堕天使の本性も知らない。それに、あなたは私に何もできないもの」 そう言う少女の顔は少し曇っている。なにもされないことが、どうしてそうも哀しいのだろうか。
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