神の使いと堕ちた光

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一方、少女と堕天使はそんなことになっているとも知らず、堕天使が連れてきた小鳥を見ていた。 「可愛いですね。それにしても、この小鳥、以前見たことがあるような………?」 少女は手の中の小鳥を見ながら、頭に疑問符を浮かべた。その少女の様子を見た堕天使は、ものすごく驚いた顔をしている。少女の言葉に、何か不思議なことでもあったのだろうか。 「お前、まさか覚えて―――」 堕天使がそこまで言ったところで、突然聖堂の扉が開いた。その先にいたのは、手に武器を持った人間達と、怒りに顔をゆがめた大司教だ。 「御使いよ、なぜここに堕天使風情がいるのか、納得のいく説明をしていただけますかな?」 今までの大司教からは考えられないほど威圧的で、ドスのきいた声に、少女は一瞬臆してしまったが、すぐさま言い返そうと、口を開く。 「彼は私の大切な方。その彼を侮辱することは許しません」 少女は言いながら、顔をしかめた。心を読まなくても、大司教の表情で、少女や堕天使に対して何を思っているのかがはっきりと分かる。侮蔑や悪意、憎しみといったものだ。 「御使いよ、堕天使にたぶらかされましたか。皆のもの、御使いは堕天使に魅了された。もはや我らの敵である。即刻、処刑せよ!」 少女の態度に、大司教はひどい憎悪を感じた。この国でもっとも邪悪であるとされる色は黒。それ故、悪魔、堕天使といったものは、この国では何よりも邪悪な存在なのだ。 今まで崇めていた人物が邪悪な存在に魅了された。そんなことが知られれば、この教会への信仰は消え、この教会の存亡も危うい。 「御使い様、お覚悟を」 大司教と同じことを考えた人間達は、自分たちではかないそうにない堕天使ではなく、まず少女から消すことに決めた。 「ちっ」 堕天使は軽く舌打ちをすると、少女を抱えて襲い来る攻撃の数々を避けていく。しかし、多勢に無勢、しかも、少女を守りながらでは、堕天使に分が悪い。少しずつ、堕天使の体に傷が目立ってきた。 「すまない、ちょっと降ろすぞ」 人間達と距離をとり、堕天使は少女をおろした。その体には、数え切れないほどの傷ができており、表情もかなり辛そうだ。
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