愛は哀へと成り果てる

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微かに香る血と硝煙の匂い。そして、それらを隠すかのような濃いジャスミンの香り。目の前にある路地裏の入り口には、多くの軍服の姿がある。 私はリリス。とある犯罪組織の一人。少し前に、そこの路地裏で一仕事を終えたばかりだ。ここでは、不備がないかを確認している。 数分後、軍服たちは散り散りになり、帰っていった。ここでの捜査は終わったようだ。 「今回も問題なし。さて、帰ろうかな」 「君、ちょっといいかい?」 私が帰ろうとしたとき、後ろから誰かに声をかけられた。振り返ると、目の前にいたのは、さっき遠くに行ったはずの軍服を着た男。 「あの、私に何かご用ですか?」 まだ少し残っている匂いは、このジャスミンの香りで完全に消えているし、誰にも見られてはいないはずだ。だが、もしも、この男が気付いているのなら、仕方ない。こいつには消えてもらおう。 私は上着で隠した銃に手をやった。周りに人影はない。ここでこいつを撃ったとしても、十分逃げられる。
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