愛は哀へと成り果てる

4/12
前へ
/23ページ
次へ
「いや、用ってほどじゃないんだが、君はこのあと暇かい?」 ………………。まさか、これはナンパをしているのか? 軍服のままで?……………こいつの頭は大丈夫か? 「ナンパですか?残念ながら、私はあなたに興味ありません。他の人にどうぞ」 私はそう言って立ち去ろうとしたが、男に腕を捕まれてしまった。 「いや、ナンパじゃないんだ。俺の名前はアダム。さっき、君を見たときに、君のその儚げな瞳に心引かれたんだ」 男は、少し目をそらし、薄くほほを染めながら、そんなことを私に言ってきた。 私の目が儚げ、か。そんなこと、初めて言われた。ただ、私にはなんの夢もないから、目が死んでるだけなのに。 男は、続ける。 「つまり、君に一目惚れしたんだ。友達からでいい。俺と付き合ってほしい」 いきなり告白された。私は驚き、改めてこの男の顔を見てみる。全体的に整った顔立ちをしており、わずかに逸らされた瞳は澄んだ泉のような蒼い色をしている。それらを飾る、透き通ったきれいな銀髪はすこし長めだ。 はっきりと言おう。かなりかっこいい。10人いたら、9人がかっこいいと言うだろう。 私は、自分の顔が熱くなるのを感じた。そもそも、私は、誰かに告白されたことがない。だから、告白されたことが恥ずかしいだけかもしれない。それでも、私は恋と言うものをしてみたい。そうすれば、この、意味の無い生が、少しでもましになるかもしれない。だから、私の答えはただひとつ。 「私なんかでいいのなら、喜んで」 私は彼に向かって微笑んだ。他人に向かって笑うのは、いったいいつぶりだろうか。そんな私のぎこちない微笑みに、彼はとてもきれいな笑顔で返してくれた。私の鼓動が小さく高鳴る。この感情が恋なのだろうか。とても、心地いい。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加