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「いや、用ってほどじゃないんだが、君はこのあと暇かい?」
………………。まさか、これはナンパをしているのか? 軍服のままで?……………こいつの頭は大丈夫か?
「ナンパですか?残念ながら、私はあなたに興味ありません。他の人にどうぞ」
私はそう言って立ち去ろうとしたが、男に腕を捕まれてしまった。
「いや、ナンパじゃないんだ。俺の名前はアダム。さっき、君を見たときに、君のその儚げな瞳に心引かれたんだ」
男は、少し目をそらし、薄くほほを染めながら、そんなことを私に言ってきた。
私の目が儚げ、か。そんなこと、初めて言われた。ただ、私にはなんの夢もないから、目が死んでるだけなのに。
男は、続ける。
「つまり、君に一目惚れしたんだ。友達からでいい。俺と付き合ってほしい」
いきなり告白された。私は驚き、改めてこの男の顔を見てみる。全体的に整った顔立ちをしており、わずかに逸らされた瞳は澄んだ泉のような蒼い色をしている。それらを飾る、透き通ったきれいな銀髪はすこし長めだ。
はっきりと言おう。かなりかっこいい。10人いたら、9人がかっこいいと言うだろう。
私は、自分の顔が熱くなるのを感じた。そもそも、私は、誰かに告白されたことがない。だから、告白されたことが恥ずかしいだけかもしれない。それでも、私は恋と言うものをしてみたい。そうすれば、この、意味の無い生が、少しでもましになるかもしれない。だから、私の答えはただひとつ。
「私なんかでいいのなら、喜んで」
私は彼に向かって微笑んだ。他人に向かって笑うのは、いったいいつぶりだろうか。そんな私のぎこちない微笑みに、彼はとてもきれいな笑顔で返してくれた。私の鼓動が小さく高鳴る。この感情が恋なのだろうか。とても、心地いい。
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