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「へぇ、知ってたんだ。俺の思いはこれと同じ。リリス。どうか俺と結婚してほしい」
そう言って、彼はダイヤモンドがついた指輪を私に差し出した。
私は嬉しくて、涙が出そうになった。すぐにうなずこうとした私を、私の心が押し留めた。
彼は敵対組織の人間。彼と結ばれることは、私が組織を裏切ったも同然。今までは、スパイ活動だとごまかせたけど、結婚してしまえば、もう、ごまかせない。
『裏切り者には死を』
それが、組織の掟。事実、私も裏切り者を消してきた。そして、その裏切り者に関わった者もすべて。
なら、私たちが結ばれてしまえば、私だけでなく、彼も消されてしまう。それだけは、絶対にダメ!!
「ごめんなさい……ごめんなさいっ」
私は、さっきとは違い、悲しみの涙を流しながら、彼に何度も頭を下げた。
彼に憎まれたって構わない。彼を守るためなら、どう思われたっていい。
私の思いを知ってか知らずか、彼は私に近づき、
「きっと、何か事情があるんだろう?それが関係なくなるまで、俺はずっと待ってるよ。だから、それまでは、ずっと一緒にいよう」
そっと私の涙をぬぐい、私を抱きしめた。彼の顔は優しさに満ちていて、また、涙がこぼれた。
ごめんなさい。私とあなたは、永遠に結ばれることはないの。あなたが闇に堕ちない限り。
私は心の中で彼に謝りながら、そっと彼に身を預けた。
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