十二章(暗殺)

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「では、アーサー、サーシャ殿、夕刻に森に着くように出発する。それまでに準備を済ませておくように」  ミゲルはそう言うと部屋を出て行こうとした。  そのミゲルに守備隊長ハワードが声を掛ける。 「ミゲル、明後日の夕刻までに戻って来いよ。もし戻らなければ森に火をかける」 「必ず戻ってくる。ラディスの首を持ってな」  ミゲルが出て行くと、ハワードがジェネラスに近寄った。 「ジェネラス様、森を焼くのはひとまず延期いたします。ですが明後日の夜までにミゲル達が戻らなければ……」 「致し方あるまい。おまえに全て任せる」    ハワードはその言葉を聞くと部屋を出て行った。  出て行く直前に、サーシャとアーサーに向かって成功を祈ると言った。  そして、出来る事なら森を焼きたくないのは自分も同じなのだと言った。  それは、恐らくハインベルグに住む全ての人間の共通の思いに違い無い。 「ラディスさえ倒せば平和が戻る。頼むぞ」  ジェネラスが言うとサーシャが最初から思っていた疑問を口にした。 「ラディスと言う男が賊の首領だと言うのはわかりました。しかし、首領だけ暗殺しても賊そのものを殲滅しなければ根本的な解決にはならないのではないですか?」  サーシャのその質問にジェネラスは首を横に振って答えた。 「奴等があそこまで非道な残虐行為をやりだしたのはラディスが首領になってからだ。それまでは小さな悪さはしていたが、何百人もの農民を殺すなんて狂った行為はしなかった。あの男は正気じゃない。正常な神経の持ち主なら何の罪も無い農民を虐殺することなど出来るワケがない」 「サーシャさん、話を聞く限りでは、私もそのラディスと言う男が狂ってるとしか思えない。いや、私にはその男が人間とは思えない。もし悪魔がラディスと言う男に成りすましていたとしても私は驚きません」  アーサーがジェネラスに同意するように言った。 「悪魔……」  サーシャの口から不吉な言葉がもれた時、これから少しづつ日が傾いていくということを知らせるように窓から冷たい秋風が吹き込んだ。      
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