十二章(暗殺)

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 日が沈む直前の妖しい夕闇。  その微妙に明かるさが残る闇の中に五人の人影が立っていた。  古代の森の入り口である。  ミゲル、アーサー、サーシャ、それと特殊部隊の中からミゲルが選んだ二人の部下。  あまり大人数で行けば、ラディスに接近するまでに気付かれる可能性が高くなる。  気付かれれば逃げられる。  森の中で一旦逃げ出されたら追うのは不可能に近い。  地の利は向うにある。  少数精鋭で気付かれずに潜入し、ラディスを仕留めて脱出するしかない。 「ジェフ、ラクマン、大体の位置は頭に入っているな? ぬかるんじゃないぞ」  ミゲルが二人の部下にハッパをかけた。  ミゲルを先頭に、部下の二人、サーシャ、アーサーの順で進む。  昼間でも薄暗い森の中は今はもうほとんど明かりが無い。  その闇の中をミゲルは迷うこと無く進んでいく。  二時間ほど進んだところでミゲルが不意に足を止めた。 「いる……まだ向うは気付いてない」  ミゲルが聞こえるか聞こえないかというくらい小さな声で囁いた。  耳を済ませると、闇の中に吹く微風に乗って、遠くから人の声が聞こえてくる。 「奴等のアジトね?」  サーシャが言うと、闇の中でミゲルが首を横に振る気配がした。 「アジトはまだしばらく先だろう。恐らく見張りの連中だな」 「隊長、どうしますか?」   部下の一人ジェフがミゲルに聞く。 「せっかくだから奴等に案内を頼むとするか」 「了解」 「アーサー殿、サーシャさん、ここは我等に任せて頂こう」  言ったのはラクマンという部下であった。  アーサーやサーシャがいかに剣技に優れていても、闇の中で音を立てずに敵に接近する技術においては特殊部隊にかなわない。
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